水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目の許容限度等の見直しについて

平成23年10月27日、“カドミウムに係る水質環境基準値及び地下水環境基準値の変更(0.01mg/L以下→0.003mg/L以下)”が告示されたことを踏まえ、「中央環境審議会 水環境部会 排水規制等専門委員会」では、平成25年11月より水質汚濁防止法における排水基準、地下浸透基準の見直しに着手している。
現状では、下記の案が提示されている。

  • 公共用水域への排水基準:環境基準の10倍(現行0.1mg/L以下→0.03mg/L以下)
  • 地下浸透基準:0.001mg/L以下(現行据え置き)
  • 浄化基準:地下水の環境基準が設定されている既存の有害物質に係る浄化基準については、環境基準と同じ値に設定されている。これと同様に、カドミウムに係る浄化基準についても、環境基準と同じ値とする。

<参考>公共用水域での検出状況
過去5年のデータでは、見直し後の環境基準値を10地点前後で超過している。また、カドミウムに適用される排水処理技術は、排水基準が見直された場合にあっても、見直し後の環境基準の達成・維持を図る上で妥当な排水処理が維持されると考えられる。

<参考>カドミウムの使用実態
カドミウムは亜鉛鉱に含まれ、亜鉛の製錬過程において不純物として除去された結果、副産物として生産される。また、人体にとって有害な重金属で長期間の暴露により腎臓、肺、肝臓に障害を生じることで知られている。特にカルシウム代謝を阻害し、栄養上の欠落等の要因と複合して骨粗鬆症、骨軟化症を発症させる可能性が指摘されている。 人体に有害なものではあるが、充電池として優れた性質を有するため、ニッケル・カドミウム電池が最大用途となっている。ニッケル・カドミウム電池は大出力放電、過充放電に強く、鉛蓄電池に比べ小型、軽量であるが、環境上の問題からにニッケル水素電池、更に高価なリチウムイオン電池への代替が進んでいる。
なお、欧州においては、WEEE&RoHS指令が公布され、カドミウム等有害物からの環境保護を明確にしている。したがって顔料の使用は厳しく制限されつつあり、規制強化は世界的趨勢となっている。
この他の用途として、カドミウムは融点の低さから合金として低融点はんだ及びヒューズとして利用される他、摩擦係数の低さと耐久性を生かしたベアリング向けの合金にも使用されている。また、中性子を吸収するため、原子炉の制御用材料としても用いられる。自動車部品を主とした防錆目的のカドミウムめっきとしては、現在は殆ど使用されていない。
また、海洋では海水からカドミウムが生体内に取り込まれ、ホタテ貝については他の貝類と比してカドミウム濃度が高いことが知られている。特にホタテ貝の中腸腺(ウロ)には比較的高濃度のカドミウムが蓄積されており、廃棄処分されてきたが、肥料・飼料としての活用のため、カドミウム除去技術が開発研究されているところである。 現在の排水実態調査から 0.03mg/Lを超過する事業場が見られる。

【告示予定】2014年度前半(予定)
【出典】 環境省 http://www.env.go.jp/council/09water/yoshi09-12.html