公布「エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律」

2018年6月13日「エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律(改正省エネ法)」が公布された。

2015年に策定された「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」で掲げる省エネ見通しの実現に向けて、現行法が直面する課題に対応するため、企業間連携による省エネの取組みの評価や小口配送増加へ対応するために、所要の措置を講じるもの。

主な改正内容

1連携省エネルギー計画の認定制度(新設)※産業・業務・運輸

現行法では、エネルギーの使用の状況等を企業単位で報告するため、連携による省エネ取組を行っても、効果が適切に評価されないため、複数事業者が連携して行う省エネの取り組みを評価する体制へ変更する。

具体的には、「連携省エネルギー計画」の認定を受けた者は、連携省エネの省エネ量を企業間で分配して定期報告可能となる。これにより、省エネに取り組んだ各事業者が適切に評価され、省エネへの取り組みが促進される。

【改正法の箇条】
・改正法第46条~第50条(工場・事業場規制)
・改正法第117条~第121条(荷主規制)
・改正法第134条~第138条(輸送事業者規制)

出典:資源エネルギー庁「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の一部を改正する法律について」

2.認定管理統括事業者の認定制度(新設)※産業・業務・運輸

グループ企業が一体的に省エネ取組を行うことについて認定を受けた場合(認定管理統括事業者)、親会社による省エネ法の義務(定期報告・中長期計画の提出、エネルギー管理統括者等の選任)の一体的な履行を認める。

【改正法の箇条】
・改正法第29条~第44条(工場・事業場規制)
・改正法第113条~第116条(荷主規制)
・改正法第130条~第133条(輸送事業者規制)

出典:資源エネルギー庁「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の一部を改正する法律について」

3.運輸部門(貨物輸送分野)における改正

(1)貨物の「荷主」の定義見直し

運輸部門については、ここ最近のネット通販市場の著しい成長にともなう小口配送の増加などによる「増エネ」への対応を強化する必要がある。

現行法では、工場間の輸送を念頭に、荷主の定義を「貨物の所有者」としている。一方、ネット通販においては、売買契約が成立した段階で貨物の所有権が購入者に移る事例もあり、事実上は輸送の方法などを決定していても、荷主として省エネ法の規制を受けないネット小売事業者も存在します。

そこで、改正法では、荷主の定義を「貨物の所有権を問わず、契約等で貨物の輸送方法等を決定する者」と改め、貨物の所有権を問わず、契約などで貨物の輸送の方法などを決定するネット小売事業者も、省エネ法の規制対象とし、省エネの取組みを促進する。

※インターネット上に、個々の出店者がそれぞれ独立して商品を販売するサイトを提供するモール事業においては、貨物輸送事業者との契約がなく、輸送の方法などを決定しないモール事業者ではなく、個々の出店者が規制対象となる。

【改正法の箇条】改正法第105条関係

現行法 改正法
法第58条

荷主(自らの事業に関して自らの貨物を継続して貨物輸送事業者に輸送させる者をいう。以下同じ。)は、(・・・以下省略・・・)

法第105条
この款において「荷主」とは、次に掲げる者をいう。
一 自らの事業(貨物の輸送の事業を除く。次号において同じ。)に関して貨物を継続して貨物輸送事業者に輸送させる者(当該者が継続して貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送の全てについてその輸送の方法等が同号に掲げる者により実質的に決定されている場合を除く二 自らの事業に関して他の事業者が継続して貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送について当該他の事業者との契約その他の取決めにより当該貨物の輸送の方法等を実質的に決定している者として経済産業省令で定める要件に該当する者

出典:資源エネルギー庁「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の一部を改正する法律について」

(2)「準荷主」の定義

現行法では、貨物を受け取る「荷受け側」に対しては省エネの努力を求めていない。しかし、荷受け側が到着する貨物について到着日時などを適切に指示しないことで、貨物が無秩序に到着し、手待ちが起こる事例も発生している。

そこで、到着日時等を適切に指示することのできる貨物の荷受側等を「準荷主」と新たに位置づけ、省エネ取組の努力を求める(努力規定)。

※準荷主の省エネ取り組みの規範となるガイドラインが発行されている。

資源エネルギー庁「準荷主ガイドライン」/平成30年12月

【改正法の箇条】改正法第106条関係

出典:資源エネルギー庁「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)の一部を改正する法律について」

4.中長期計画の提出頻度の軽減 ※産業・業務・運輸

工場等規制において、直近過去2年度以上連続で事業者クラス分け評価制度においてS評価の場合、翌年度以降、S評価を継続している限りにおいて、計画期間内(5年が上限)は中長期計画の提出が免除される。

※軽減の条件を満たしている事業者であっても「中長期計画」を提出することは可能。

スケジュール

【公布】2018年6月13日
【施行】2018年12月1日

※新たに「荷主」となる者の貨物の輸送量に関する届出の規定については、2020年4月1日から適用する。

出典

○資源エネルギー庁「平成30年省エネ法改正について」

○資源エネルギー庁「時代にあわせて変わっていく「省エネ法」」

○経済産業省「省エネ法の改正(平成30年度)」