公布「浄化槽法の一部を改正する法律」

2019年6月19日「浄化槽法の一部を改正する法律」が公布された。

トイレの排水のみを処理する「単独処理浄化槽」から台所や浴室など全ての生活排水を処理する「合併処理浄化槽」への転換を促すもの。

放置すれば生活環境に悪影響を与える単独処理浄化槽の管理者に対し、除却など必要な措置をとるよう都道府県が勧告できるようにする。

背景

「単独処理浄化槽(※)」の汚濁負荷は合併処理浄化槽と比べ約8倍あり、河川汚濁の原因になるため、2001年の浄化槽法改正により、原則、単独処理浄化槽の新設は禁止された。しかしながら、単独処理浄化槽が浄化槽全体の53%・約400万基残存しており、環境負荷の低い合併処理浄化槽への転換を促すことが必要となっている。

さらに、水質に関する定期検査の受検率は40%にとどまり、2016年度には老朽化の影響で破損や漏水などが約6,000件発生しており、浄化槽管理の強化が必要となっている。

「単独処理浄化槽」と「合併処理浄化槽」
●単独処理浄化槽:し尿のみを処理し、生活雑排水(台所・洗濯・風呂などの排水)を処理しない浄化槽。2001年法改正で原則新設禁止
●合併処理浄化槽:し尿・生活雑排水の両方を処理する施設。下水道と同等の処理性能を有している。近年の人口減少等の社会情勢や市町村財政の緊縮とあいまって、合併処理浄化槽による汚水処理施設の整備が進められている。

改正の概要

1.「特定既存単独処理浄化槽」に対する措置(附則第11条)

都道府県知事は、「特定既存単独処理浄化槽(※)」に係る浄化槽管理者に対し、当該特定既存単独処理浄化槽に関し、除却その他生活環境の保全及び公衆衛生上必要な措置をとるよう助言又は指導することができることとする。⇒相当の期限を定めて勧告・命令も可能。

特定既存単独処理浄化槽とは?
11条検査結果やその他の情報から判断して、そのまま放置すれば生活環境や公衆衛生上支障が生じるおそれのある緊急性の高い既存単独処理浄化槽。

2.「公共浄化槽」制度の創設(法第12条の4~第12条の17)

市町村が設定する「浄化槽処理促進区域内(※)」において単独処理浄化槽を使用する住民が同意した場合には、市町村が設置する浄化槽(公共浄化槽)の使用・接続を義務化する。

浄化槽処理促進区域とは?
自然的・経済的・社会的諸条件からみて浄化槽によるし尿及び雑排水の適正な処理を特に促進する必要があると認められる区域を、浄化槽処理促進区域として指定することができる(都道府県知事との協議が必要)。

3.浄化槽の使用の休止及び義務の免除(法第11条の2)

浄化槽管理者が清掃をして、その使用の休止を都道府県知事に届け出た浄化槽について、保守点検、清掃及び定期検査の義務を免除する。

また、浄化槽の使用の再開についての届出も規定する。

4.浄化槽台帳の整備(法第49条)

都道府県知事は、浄化槽に関する台帳を作成し、保管しなければならない。

  • 浄化槽の所在・地番、浄化槽管理者の氏名又は名称
  • 7条検査、11条検査の実施状況
  • その他環境省令で定める事項

5.協議会の設置(法第54条)

地方公共団体が、地域の実情に照らして適切に対応できるよう、浄化槽の設置及び管理に関し、必要な協議を行うための協議会を組織することができることとする。

6.浄化槽管理士に対する研修の機会の確保(法第48条第2項)

保守点検業者の登録に関し、浄化槽管理士(国家資格)に対し、最新の知見を身に着ける研修の機会の確保に関する事項を追加。

7.環境大臣の責務

環境大臣は、都道府県知事に対して、定期検査に関する事務等に関し必要な助言、情報の提供その他の支援を行うように努めなければならない。

(出典)衆議院

スケジュール

【公布】2019年6月19日
【施行期日】公布日から1年以内

「浄化槽法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」により、改正法の施行日は、2020年4月1日と規定された。(2019年9月6日追記)
省令は2020年1月公布予定。

出典

○環境省「浄化槽法の一部を改正する法律(令和元年法律第40号)について 」

○衆議院「浄化槽法の一部を改正する法律案 概要」

○環境省 浄化槽リノベーション推進検討会