公布「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令」等

2019年8月2日「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等」、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の規定に基づき調達価格等を定める件の一部改正」が公布された。

未稼働案件による国民負担の増加への対応を中心とした改正

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)とは?
日本におけるエネルギー自給率の向上、地球温暖化対策としての観点から、再生可能エネルギーの普及を目的とし、2012年7月より「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」が施行され、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等)によって発電された電気を、小売電気事業者(電力会社)が一定期間中は同じ価格で買い取ることを国が保証する制度(固定価格買取制度)。
電力会社が電気を買い取る際にかかる費用の一部は、電気を使用している各家庭から、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)として、毎月の電気料金に上乗せされ回収されている。この再エネ賦課金は、年々増加しているという課題がある。
課題・背景

1.未稼働案件

●2012年7月のFIT制度開始以降、参入障壁が低く開発のリードタイムが短い太陽光発電が急速に拡大し(FIT認定容量の約81%)、当初は高額だった太陽光パネルなどのコストも低減してきている

●FIT認定を受けた事業用太陽光発電による電気の「調達価格」は、太陽光パネルの価格などをもとに設定されるため、太陽光発電コストが低減すれば、FITの調達価格も下落していく仕組みとなっている(再エネ賦課金も下がる)

●しかし、認定時に調達価格が決定する仕組みとなっている中で、大量の未稼働案件があることで、高い調達価格の権利を保持したまま運転を開始しない=①国民負担増大の懸念、②新規開発・コストダウンが進まない、③系統容量が未稼働案件に抑えられてしまうという課題が生じていた。未稼働案件に関してはこれまで次のような対策を講じてきた。

  • 2017年4月「改正FIT法」施行:2016年8月1日以降に接続契約したものは3年の運転開始期限を設定
  • 2019年4月「2012~2014年度認定案件に対する具体的な対応」施行:改正FIT法の措置の対象外となった2016年7月31日以前に接続契約した案件に対する適用調達価格変更

●上記対策でカバーできなかった対象に対して引き続き対策の措置が必要。

2.その他(環境影響評価法の対象事業となる太陽光発電への対応)

2017年4月施行の改正FIT法において、太陽光発電の運転開始時期は「認定日から3年」が標準形とされてきた。
一方、環境影響評価法に基づく「第一種事業※1」に系統連系(交流)ベースで4万kW以上の太陽光発電事業、「第二種事業※2」に系統連系(交流)ベースで3万kW以上の太陽光発電事業を追加する「環境影響評価法施行令」が、2020年4月1日施行されることとなった。
これを踏まえて、環境影響評価法の対象となる大規模な太陽光発電事業の運転開始時期(標準形)の見直しが必要となった(環境アセスメント終了までに時間を要すること・国の審査期間などを考慮)。
※1 第一種事業:環境アセスメントの対象
※2 第二種事業:地域特性によるスクリーニングを踏まえた環境アセスメントの対象

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則

第5条 認定基準

◎ 太陽光発電設備にかかわる再生可能エネルギー発電事業計画の認定の申請であって、当該認定申請の際、現に環境影響評価法に規定する対象事業(3万kW以上の太陽光発電所の設置事業)に該当するものとして環境影響評価を行っているときは、「認定日から5年以内に運転を開始する計画であること」を認定基準に加える。

第9条 軽微な変更

□ 調達期間が終了した認定発電設備にかかわる再生可能エネルギー発電事業計画の変更のうち、調達期間中においては変更の認定を要することとしていたものについて、調達期間終了後は法第10条第1項の経済産業省令で定める軽微な変更とし、事前変更届出で足りることとする。

第14条 特定契約の締結を拒むことができる正当な理由

□ 電気事業者が特定契約の締結を拒むことができる正当な理由として、「出力抑制の回避措置を講じてもなお電気の供給量が需要量を上回ることが見込まれる場合においては、送配電事業者の指示に応じて出力抑制を行うこと」を接続契約の内容としていないことが規定されているところ、この回避措置に「需給バランス改善用の蓄電池の充電」を加える。

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の規定に基づき調達価格等を定める件

第1条 定義

◎ 認定申請の事業が、申請時において環境影響評価法の対象事業となる太陽光発電事業(3万kW以上の太陽光発電所の設置事業)の場合、「運転開始期限を認定日から5年」とする。

あわせて、既に認定を受けている以下の太陽光発電設備にかかわる再生可能エネルギー発電事業計画が、環境影響評価法に規定する対象事業に該当することとなった場合の運転開始期限を、次のとおりとする(現行FIT法における太陽光発電の運転開始期限は認定日から3年が標準形のため、認定日から5年となるよう補正)。

  • 2017~2019年度に認定を受けたもの:認定日から5年
  • 2012~2014年度に認定を受けたもの:2020年12月31日と着工申込みの受領日から1年を経過する日のいずれか遅い日

◎ 2015~2016年度に認定を受けた「事業用太陽光発電(10kW以上)」のうち、運転開始期限が設定されていない(2016年7月31日以前に接続契約が締結)未稼働案件についての運転開始期限を次のとおりとする。

  • 最初の着工申込み受領が2020年3月31日以前の場合:2021年3月31日
  • 最初の着工申込み受領が2020年4月1日以降の場合:着工申込み受領日から1年を経過する日

第2条 太陽光発電設備に係る調達価格等

◎ 運転を開始していない「事業用太陽光発電(10kW以上)」のうち、2015年度に旧認定を受け、2016年7月31日以前に接続契約が締結されたものについて、着工申込み受領日が2020年度に属する場合は、2018年度の調達価格(18円/kWh)を適用する。

◎ 運転を開始していない「事業用太陽光発電(10kW以上)」のうち、2016年3月31日以前に旧認定を受け、2016年7月31日以前に接続契約が締結されたものについて、着工申込みの要件の1つとして、条例に基づく環境影響評価にかかわる評価書の公告と縦覧が終了していることを規定しているところ、環境影響評価法に規定する対象事業に該当する場合は、同法に基づく環境影響評価にかかわる評価書の公告と縦覧が終了していることも要件に加える。

□ 10kW以上の太陽光発電設備のうち、2015年度に旧認定を受け、2016年7月31日以前に接続契約が締結されたものについて、第10条第1項の規定による太陽電池にかかわる変更(太陽電池のメーカー、太陽電池の種類、太陽電池の変換効率の低下の変更)の認定を、2019年度における調達価格の変更事由としないこととする。

スケジュール

【公布】2019年8月2日
【施行】「□」を付した事項は公布の日(2019年8月2日)から、「◎」を付した事項は2020年4月1日から施行する

出典

○電子政府の総合窓口「パブリックコメント:結果公示案件」

資源エネルギー庁「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案等の概要」2019年6月

資源エネルギー庁「再生可能エネルギー政策の再構築に向けた当面の対応」2019年5月30日

資源エネルギー庁「再生可能エネルギー政策の再構築に向けた当面の対応②」2019年6月10日