2019年4月26日、沖合海底自然環境保全地域制度の創設、漁業や鉱物資源の採掘を規制等を盛り込んだ「自然環境保全法の一部を改正する法律」が公布された。
改正の背景、概要は以下のとおり。
(1)日本は、世界有数の広大な管轄海域を有する海洋国家であり、沖合の区域には海山、熱水噴出域、海溝等の多様な地形等に特異な生態系や生物資源が存在している。
(2)海洋環境の保全は国際的な潮流となっており、日本が主導した生物多様性の世界目標である愛知目標等の国際目標を踏まえ、主要国でも海洋保護区の設定が加速している。
(3)現在、日本は、沿岸域を中心に約8.3%の海域に海洋保護区を設定している(愛知目標では、海域の10%を海洋保護区に設定することとなっている)。さらに、沖合の区域における海底の自然環境についても保全を図るため、排他的経済水域を含む沖合の区域について新たな海洋保護区制度を創設し、自然環境の保全と海洋資源の利用とを両立させながら進めていく必要がある。
(4)環境省では2018年6月~8月に「沖合域における海洋保護区の設定に向けた検討会」が開催され、沖合の区域における海洋保護区の設定のあり方について有識者による議論が進められた。これを踏まえ、2019年1月には中央環境審議会より(「生物多様性保全のための沖合域における海洋保護区の設定について」)答申があった。この答申を踏まえ、自然環境保全法の一部を改正することとなった。
環境大臣は、沖合の区域(※)で、その区域の海底の地形若しくは地質又は海底における自然の現象に依存する特異な生態系を含む自然環境が優れた状態を維持していると認めるもののうち、自然的社会的諸条件からみてその区域における自然環境を保全することが特に必要なものを、所要の手続を経た上で、沖合海底自然環境保全地域として指定することができることとする。
指定の際は、中央環境審議会等の意見を聴くとともに、関係行政機関の長と協議を行う。
沖合海底自然環境保全地域においては、鉱物の掘採・探査、海底の動植物の捕獲等に係る特定の行為を規制対象とする。
- 特に保全を図るべき区域(沖合海底特別地区):許可制
- その他の区域:届出制
沖合海底自然環境保全地域における自然環境の保全のため、環境大臣による報告徴収、立入検査及び中止命令等の必要な権限を規定するとともに、罰則の規定及び外国船舶に係る担保金等の提供による釈放等に関する規定その他所要の規定の整備を行うこととする。
(出典:環境省)
【公布】2019年4月26日
【施行】公布の日から1年以内
○環境省「自然環境保全法の一部を改正する法律案の閣議決定について」/2019年3月1日
○環境省「沖合域における海洋保護区の設定に向けた検討について」