2017年3月29日に「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」、2017年4月27日に「特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令」が公布された。2017年6月1日より施行される。
三酸化二アンチモンについて、国が行う「化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価」を行ったところ、リスクが高く規制が必要であるとの結論となったことから、労働者の化学物質へのばく露防止措置や健康管理を推進するための必要な改正を行うもの。
三酸化二アンチモンとは:樹脂や繊維などを燃えにくくするための「難燃助剤」などに使われる化学物質
改正の概要
1.労働安全衛生法施行令
1-1 「特定化学物質(第2類物質)」に追加
- 特定化学物質の第2類物質として、三酸化にアンチモン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物(三酸化にアンチモン等)を追加する
- これにより、当該物質を製造し、又は取り扱う場合は、①作業主任者の選任・②作業環境測定の実施・③特殊健康診断の実施が義務付けられる
(施行令別表第3関係)
1-2 配置転換後の健康診断を行うべき有害な業務への追加
- 三酸化二アンチモン等を製造し、又は取り扱う業務を、労働安全衛生法第66条第2項後段の健康診断の対象業務とする
(施行令第22条第2項関係)
2.特定化学物質障害予防規則・労働安全衛生法施行規則
2-1 「特定第2類物質」に追加
- 三酸化二アンチモン等を、特定化学物質(第2類物質)のうち、「特定第2類物質」に追加する(※樹脂等により固形化された物を取り扱う業務は適用を除外)
- これにより、①局所排気装置の設置、②容器の使用、③作業・貯蔵場所への関係者以外の立入禁止、④漏洩の防止、⑤洗浄設備の設置、⑥緊急時の医師による診察・処置、⑦保護具の備付け等が義務付けられる
(特化則第2条及び別表第1関係)
2-2 作業主任者
- 三酸化二アンチモン作業では、「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから、作業主任者を選任し、職務を行わせる
(特化則第27条・第28条関係)
2-3 特殊健康診断
- 三酸化二アンチモン作業に常時従事する労働者【業務従事労働者】に対し、雇入れまたはこの業務への配置替えの際およびその後6か月以内ごとに1回、定期に、規定の項目について健康診断を実施する
- 過去にオルト―トルイジン作業に常時従事させたことがあり、配置転換して現在も雇用している労働者【配置転換後労働者】についても同様に健康診断を実施
- 特殊健康診断の項目として、尿路系腫瘍等を予防・早期発見するための項目を設定
(特化則第39条関係)
2-4 「特別管理物質」の追加
- 三酸化二アンチモン等を特別管理物質に追加
- これに伴い、三酸化二アンチモン等については、特化則第38条の3の作業場内掲示、特化則第38条の4の作業記録の作成及び記録の30年間保存、特化則第40条第2項の特殊健康診断の結果の記録の30年間保存、特化則第53条の記録の提出の対象となる
(特化則第38条の3関係)
スケジュール
【公布】2017年3月29日(労働安全衛生法施行令)・2017年4月27日(特定化学物質障害予防規則)
【施行】2017年6月1日
出典
○厚生労働省「平成29年6月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正(三酸化二アンチモンに係る規制の追加)」