公布「農薬取締法の一部を改正する法律」

2018年6月15日「改正農薬取締法」が公布された。

農薬の安全性の一層の向上を図るため、農薬の規制に関する国際的動向等を踏まえ、同一の有効成分を含む農薬について一括して定期的に安全性等の再評価を行う制度の導入・農薬の登録事項を追加する等の改正を行うもの。

農薬取締法は、農薬の登録制度を設けることにより、効果があり、⼈の健康や環境に対して安全と認められたものだけを農薬として登録し、製造・販売・使⽤できるようにするほか、農薬使⽤者が遵守すべき使⽤基準等を規定している。

背景

1.農薬の安全性の向上

科学の発展により蓄積される、農薬の安全性に関する新たな知見や評価法の発達を効率的かつ的確に反映できる農薬登録制度への改善が必要

2.より効率的な農業への貢献

良質かつ低廉な農薬の供給等により、より効率的で低コストな農業に貢献するため、農薬に係る規制の合理化が必要
※なお、農業競争力強化支援法においても、農薬に係る規制を、安全性の向上、国際的な標準との調和、最新の科学的根拠に基づく規制の合理化、の観点から見直すこととされている。

(目指す姿)
・国民にとって、農薬の安全性の一層の向上
・農家にとって、「農作業の安全性向上」「生産コストの引下げ」「農産物の輸出促進」
・農薬メーカーにとって、日本初の農薬の海外展開の促進

改正の概要

1.再評価制度の導入等(法第8条、第9条、第15条、第29条、旧第5条)

同一の有効成分を含む農薬について一括して定期的に、最新の科学的知見に基づき安全性等の再評価を行う制度を導入する。再登録は廃止する。

(1)定期的な再評価

農林水産大臣が再評価の対象となる農薬公示。該当する農薬登録を受けている者は、期限までに試験成績を提出して、再評価を受けなければならない。(法8条)

(2)登録の変更・取り消し

再評価を行った場合に、人畜及び環境への安全性等が確認できないときは、その登録の内容(使用方法等)の変更又は登録の取消しを行うことができる。(法9条)

(3)随時評価

(1)の定期的な再評価のほか、農林水産大臣が行う科学的知見の収集(法15条)、毎年の農薬製造者からの報告等(則18条)により、人畜及び環境への安全性等に問題が生ずると認められる場合には、その登録の内容の変更又は取消しを行うことができる。(法9条)

2.農薬の登録審査の見直し(法第3条第2項、第3項、第6項)

(1)農薬の登録事項の追加(法第3条第2項)

a)農薬原体に含有される有効成分以外の成分の種類・含有濃度

b)農薬原体を製造する者の氏名及び住所並びに農薬原体の製造場の名称及び所在地

c)農薬原体の主要な製造工程

d)使用期限

e)使用に際して講ずべき被害防止方法・解毒方法(農薬使用者の防護装備等)

f)陸域を含む生活環境動植物への影響(現行は水産動植物への影響のみ)

※d)e)f)の施行は、2020年4月1日

(2)GLP基準(法第3条第2項)

登録申請時には、申請書及び農薬の安全性その他の品質に関する試験成績を記載した書類等を提出しなければならない。試験成績のうち、農林水産省令で定めるもの(特定試験成績)は、その信頼性を確保するために必要なものとして農林水産省令で定める基準(GLP基準)に従って行われる試験(基準適合試験)によるものでなければならない。

(3)提出資料の一部省略(法第3条第3項)

既登録農薬の農薬原体の成分等と同等の農薬の登録申請については、申請資料の一部を省略できることとする(ジェネリック農薬の申請の簡素化)。

(4)優先審査(法第3条第6項、法第7条)

病害虫防除や農作物等の生理機能の増進・抑制において特に必要性が高い農薬、又は適用病害虫の範囲及び使用方法が類似する他の農薬と比較して特に安全性が高いものと認める農薬については、優先的に登録審査を行う。

3.その他(法第1条、第14条、第27条)

(1)法律の目的(法第1条)

農薬の安全性その他の品質の確保を図ることを明確化する。

(2)情報の公表等(法第14条)

農林水産大臣は、登録を受けた農薬に関する情報を公表する。製造者又は輸入者は、登録の変更・取消し・失効について、販売者及び農薬使用者に周知するよう努める。

(3)農薬の使用に関する理解の促進(法第27条)

農薬使用者は、農薬の使用にあたり、普及指導員等の指導を受けるように努めるものとされているが、農薬の一層の適正使用を進めるため、自ら農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努める。

(出典)環境省

スケジュール

【公布】2018年6月15日
【施行】2018年12月1日※ただし、2(1)d)e)f)については、2020年4月1日

出典

○環境省「農薬取締法の一部を改正する法律案の閣議決定について」/平成30年3月9日

農林水産省「農薬取締法の平成30年改正(平成30年6月15日公布)」

農林水産省「第18回 農業資材審議会農薬分科会配付資料-資料4 改正農薬取締法の概要」

農林水産省「通知「農薬取締法の一部を改正する法律」の施行について」(平成30年11月30日)

○農林水産省「通知「農薬取締法の一部を改正する法律」の施行(令和2年4月)について」(令和元年6月28日)