2020年6月5日「大気汚染防止法の一部を改正する法律」公布された。
飛散性が比較的低いとして、これまで規制の対象でなかった 石綿含有成形板や石綿含有仕上塗材等を含む 石綿含有建材(いわゆるレベル3建材・非飛散性) を規制対象に追加し、
全ての石綿含有建材(飛散性+非飛散性) を規制対象とすること。
また、石綿含有建材使用有無の事前調査の信頼性確保(調査結果の都道府県等への報告義務付け・調査方法の法定化等)を行うもの。
~大気汚染防止法におけるアスベスト(石綿)飛散防止規制~
石綿を飛散させる原因となる建築材料(特定建築材料)が使用されている建築物等の解体・改造・補修作業を行う際には、「大気汚染防止法」に基づき、事前の届出・石綿飛散防止対策(作業基準の遵守)が義務づけられている。
改正の背景
前回の大気汚染防止法の改正(2013年)から5年が経過したことから、施行状況の検討を行ったところ、飛散性が比較的低いとしてこれまで規制の対象でなかった石綿含有成形板等(いわゆるレベル3建材)についても、不適切な除去を行えば石綿が飛散することが明らかになった。
さらに、解体等工事前の建築物等への石綿含有建材の使用の有無の事前調査において石綿含有建材を見落とすことや、除去作業時に石綿含有建材の取り残しがあることにより、工事に伴い石綿が飛散する事例がありました。
こうした状況を受けて、中央環境審議会において「石綿飛散防止小委員会」が開催され、今後の石綿飛散防止の在り方について検討が行われ、2020年1月24日、中央環境審議会より「今後の石綿飛散防止の在り方について」答申が行われ、この答申を踏まえ、大気汚染防止法の一部を改正することとなった。
改正の概要
●【概要】大気汚染防止法の一部を改正する法律案.pdf
●【要綱】大気汚染防止法の一部を改正する法律.pdf
●【新旧対照条文】大気汚染防止法の一部を改正する法律.pdf
●大気汚染防止法の一部改正について(「ちょうせい」第102号/令和2年8月)
●大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について.pdf
1.規制対象の拡大
規制対象について「石綿含有成形板」や「石綿含有仕上塗材」等を含む 全ての石綿含有建材(いわゆるレベル3建材も含む)に拡大するための規定の整備を行う。
※レベル3建材については、相対的に飛散性が低いこと、除去等作業の件数が膨大となり都道府県等の負担を考慮する必要があることから届出の対象とはせず、作業基準等の規制対象のみとする。
2.事前調査の信頼性の確保(法第18条の15等)
不適切な事前調査による石綿含有建材の見落となどを防止するため、以下の規定を設ける。
項目 |
①事前調査方法の法定化 …書面調査(設計図書等)・目視調査を法令上に位置付け(現行法令上では規定されておらず、マニュアルにおいて示されているが、マニュアルに基づく指導では強制力に一定の限界がある) |
②一定の知見を有する者による事前調査の実施 …建築物石綿含有建材調査者講習登録規程に定める「特定建築物石綿含有建材調査者」及び「建築物石綿含有建材調査者」を活用 |
③事前調査結果の記録・保存の義務付け …元請業者による事前調査結果の記録・保存(3年) |
④事前調査結果の都道府県等への報告(電子システムによる報告) …一定規模以上等の建築物等について、石綿含有建材の有無にかかわらず調査結果の都道府県等への報告を義務付ける (事前調査の結果、事業者が背未燃含有建材なしと判断した場合、作業実施の届出がされないことから、都道府県等において工事を把握することが困難となり、事前調査で事業者側で見落としがあった場合にも対応できるようにするため) |
3.直接罰の創設
石綿含有建材の除去等作業における石綿の飛散防止を徹底するため、隔離等をせずに吹付け石綿等の除去作業を行った者に対する直接罰を創設。
4.下請負人の義務の追加
作業基準順守義務:特定粉じん排出等作業について、作業基準遵守義務等の対象に、【下請負人】を追加する(従来は、元請業者・自主施工者)(法第18条の20等)
5.作業結果の発注者への報告・作業記録の保存
作業結果の発注者への報告:特定工事の元請業者・自主施工者は、特定粉じん排出等作業完了したときは、一定の知見を有する者に確認させた上で、その結果を発注者に対し書面で報告し、書面の写しを保存(法第18条の23第1項)
作業記録の作成・保存:特定工事の元請業者・自主施工者は、特定粉じん排出等作業に関する記録を作成し、保存(法第18条の23第2項)
→作業終了後に石綿含有建材の取り残しがあった事例が確認されたため、元請業者に対し、石綿含有建材の取り残しがないことなど作業完了を知識を有する者に確認させた上で、当該確認の結果も含め、作業結果を発注者に報告することでまた都道府県等が作業結果を確認できるよう作業に関する記録の作成・保存を義務付けることで、発注者や都道府県等が作業結果を把握し、適切な措置を講ずることができるようになる
6.その他
都道府県等による立入検査対象の拡大、災害時に備えた建築物等の所有者等による石綿含有建材の使用の有無の把握を後押しする国及び地方公共団体の責務の創設等、所要の規定の整備を行う。
(出典)環境省「【概要】大気汚染防止法の一部を改正する法律案」
(出典)大気汚染防止法の一部改正について(「ちょうせい」第102号/令和2年8月)
【閣議決定】2020年3月10日
【公布】2020年6月5日
【施行】2021年4月1日、2022年4月1日(事前調査結果の報告)
※施行日に関する内容更新(2020年10月7日)
○環境省「大気汚染防止法の一部を改正する法律案の閣議決定について」/2020年3月10日
石綿(アスベスト)は、天然にできた鉱物繊維。「熱に強い(耐熱性)」「摩擦に強い」「切れにくい(可撓性)」「酸やアルカリに強い(耐薬品性)」など、丈夫で変化しにくいという特性を持っている。
石綿は、丈夫で変化しにくいため、吸い込んで肺の中に入ると組織に刺さり、15~40年の潜伏期間を経て、肺がん、悪性中皮腫 (悪性の腫瘍)などの病気を引き起こすおそれがある。目に見えないくらい細い繊維のために、気づかないうちに吸い込んでしまう可能性がある。
石綿の用途は、主に石綿工業製品と建材製品である。昭和30年頃から使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化にともない、鉄骨造建築物などの軽量耐火被覆材として昭和40年代の高度成長期に多く使用されている。
中皮腫による死亡者数は年々増えており、今後も増加が見込まれている。