パブリックコメント「溶接ヒューム・塩基性酸化マンガンに係る健康障害防止措置の規定」(労衛法施行令・特化則・作環則等の改正案)

「労働安全衛生法施行令」「特定化学物質障害予防規則(特化則)」「作業環境測定法施行規則(作環則)」「作業環境評価基準」の一部改正に対して、パブリックコメントが行われる(2020年2月22日~3月22日)。

「溶接ヒューム」「塩基性酸化マンガン」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、第2類特定化学物質として位置付け、特殊健康診断の実施や作業主任者の選任を義務付けるなど、労働者の化学物質へのばく露防止措置や健康管理を推進するための所要の改正を行うもの。

【改正される政令・省令・告示】
1.労働安全衛生法施行令
2.特定化学物質障害予防規則
3.作業環境測定法施行規則
4.作業環境評価基準
5.特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能
6.作業環境測定基準

趣旨

労働安全衛生法では、化学物質であって、製造の許可、譲渡時の情報提供等の規制対象とすべきものについて政令で定めることとされている。また、当該規制の対象となっていない化学物質についても、健康障害を労働者に及ぼすおそれのあるものについては、労働者の当該物質へのばく露の状況等の情報に基づき、国が定期的にリスク評価等を行い、その上で、必要な規制を行っている。

今般、新たに「溶接ヒューム」及び「塩基性酸化マンガン」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働安全衛生法施行令等について、所要の改正を行うこととなった。

改正の概要

1.労働安全衛生法施行令

●概要「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案」.pdf

(1)特定化学物質(第2類物質)の追加

特定化学物質(第2類物質)に①「溶接ヒューム」・②「塩基性酸化マンガン(※1)」を追加する。

この結果、溶接ヒューム、塩基性酸化マンガンに係る業務について、新たに「作業主任者の選任(法第14条)」「作業環境測定の実施(法第65条。塩基性酸化マンガンに係る業務に限る※2)」「有害な業務に現に従事する労働者に対する健康診断の実施(法第66条第2項前段)」を義務付ける。

※1:従来の特定化学物質(第2類物質)である「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」から「(塩基性酸化マンガンを除く。)」の部分を削除し、「マンガン及びその化合物」とする。

※2:溶接不良を防ぐため局所排気装置等の制御風速が実現できないこと等から、特定化学物質(第2類物質)に適用される規制のうち、作業環境測定を行うべき作業場については、溶接ヒュームに係る作業を行う屋内作業場を除く。代わりに全体換気装置による換気、個人サンプリングによる濃度測定が義務付けられる。

【経過措置】2022年3月31日までの間は、溶接ヒューム並びに塩基性酸化マンガンに係る業 務の作業主任者を選任することを要しない

【溶接ヒュームとは】
アーク溶接時に発生する溶接ヒュームは、アークの熱によって溶かされた金属が高温の蒸気となり、その蒸気が空気中に放出され、急速に冷却されてできた固体状(金属酸化物)の細かい粒子となったもの。ヒュームは極めて小さい粒子のため、実際には、煙のように見える。

2.特定化学物質障害予防規則・作業環境測定法施行規則

●概要「特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令案」.pdf

(1)金属溶接等作業に係る措置

金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場において、
全体換気装置による全体換気の実施」「金属アーク溶接等作業の方法を新たに採用/変更する際の濃度測定・記録保存(作業終了から3年間)」「金属アーク溶接等作業労働者の呼吸用保護具の使用」等を規定する。

(2)金属溶接等作業に係る業務に従事する者に対する健康診断

金属アーク溶接等作業に係る業務に従事する労働者に対し、雇入れ/当該業務への配置換えの際及び1回/6月以内ごとに、定期に、業務の経歴の調査、作業条件の簡易な調査、溶接ヒュームによるせき等パーキンソン症候群様症状の既往歴の有無の検査等について医師による健康診断を行うこと等を規定する。

3.作業環境評価基準等

●概要「作業環境評価基準等の一部を改正する告示案」.pdf

(1)作業環境評価基準

管理濃度に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その管理濃度を「マンガンとして0.05mg/m3」に引き下げる。

(2)特定化学物質障害予防規則の規定に基づく厚生労働大臣が定める性能

局所排気装置の具備すべき性能に係る「物の種類」について、「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」を「マンガン及びその化合物」に改めるとともに、その抑制濃度を「マンガンとして0.05mg/m3」に引き下げる。

(3)作業環境測定基準

個人サンプリング法による作業環境測定の対象となる「低管理濃度特定化学物質」に「マンガン及びその化合物」を追加する等を規定する。

スケジュール

【パブリックコメント】2020年2月22日~3月22日
【公布】2020年4月下旬(予定)
【施行期日】2021年4月1日

根拠法令等

【労働安全衛生法施行令】
労働安全衛生法 第14条・第31条の2・第65条第1項・第66条第2項・第113条 など

出典

○e-GOV「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案に関する意見募集」

○e-GOV「特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令案に関する意見募集」

○e-GOV「作業環境評価基準等の一部を改正する告示案に関する意見募集」

○令和元年度「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書」を公表します/2020年2月10日

○厚生労働省「「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「特定化学物質障害予防規則及び作業環境測定法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、諮問と答申がありました」/2020年3月30日